『脊梁山脈』乙川優三郎著
乙川優三郎さん、チョー久しぶりに読んだ。
しかも現代物(とは言っても第二次大戦直後から十数年のはなしですから、一昔前ですわね)。
戦争から復員した23歳の主人公が戦後の日本をどのように見、どのように生きていこうとするのか、というお話。
うーーーん、苦手な分野だけれど乙川さんの作品だからと、相当頑張って読んだ。
本当に頑張った・・・と思う。
なにをそんなに頑張ったのかって、この小説、日本の古代史に関することにかなりのページ数を使っているから。
戦後の混乱した日本、そこはまあ予想通り。
で、まあこの主人公、戦争体験者ですから様々な屈託を抱えてこの先の自分の進むべき道が定まらないのだけれど、思いがけず父の遺産と叔父の遺産を手に入れたので復員列車で助けられた男を捜す旅に出る。(←高等遊民となる)
そこで木地師という職人の仕事に興味を持ち調べ始める。
お金と時間があるのでどんどんのめり込んでゆく。
旅を続ける主人公だが、復員直後に知り合った女性と旅の途中で知り合った女性、二人に惹かれ、しかしどちらとも結婚するわけでもなく、刹那的(←ちょっと語弊はあるかもだけれど、他に適当な言葉がみつからなかった)な付き合いを続ける。
そして木地師のこと調べるうちにどんどん古代史までも掘り進めていくことになり・・・と、まあこんな感じ。
ということで、これは戦後混乱期の恋愛小説なのか、古代史の研究書なのか、木地師と木形子(こけし)についても文献なのか、まあ、無理して分類することもないのだけれど、なんだか混乱してくるんですわ。
でも、そこはさすがに乙川さん、文章が上手だからおもしろいことはおもしろいんですよ。
で、最後まで読むと、ああやっぱり乙川さんの小説だ、最後の情景が美しい文章で終わっている。
とかなんとか、混乱した頭で感想を書いてみました。