髙田郁さんの、「みをつくし料理帖」シリーズを読む
テレビでドラマ化された「みをつくし料理帖」。
本編10巻、続編1巻、番外編(?)1巻の 全12巻。すべて文庫書き下ろし。
一話ずつでも読める連作短編小説。
先にドラマを見てしまったので、黒木華の顔がちらついて困ったが、イメージとしてはかなり近いと思う。ただ、あさひ太夫役が成海璃子だったことを考えると、うううーむ、という感じではあったが。
ま、ドラマはドラマですから・・・。
さて、作者の髙田さんはレディスコミックのマンガ原作者だったとのこと。
すると内容がとても腑に落ちる。
男女の甘く切ない恋バナがすんごく上手、というか、女性に受けやすい設定になっている。
良い悪いではなく、受けるよこれは、と素直に思える。
それと、料理の手順などが細かく丁寧に描かれているので、思わず作りたくなる・・・人も多いだろう。いくつかの料理は巻末にレシピも出ているし。(私は作りたくならなかったが)
なので、このシリーズがヒットしたのも頷ける。
全体的におもしろかったし読みやすかったが、なんというか、いくつか引っかかる部分があった。
髙田さんが関西出身だというのは、読み始めてすぐにわかった。
大阪弁がとてもリアル。といっても、私は大阪、京都はもちろん、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重など、同じ近畿地方でもそれぞれ微妙にちがうらしいのだが、その区別がついているわけではない。それでも、夫が大阪出身なので、いくらかの聞き慣れている言い回しがとてもリアルに感じ、それに比べて、関東地方の方言があんまりリアルじゃないと感じたことなど、という程度なんだけれど、髙田さんの出身が兵庫県と知って、なるほどねーと頷いてしまったのだった。
それと第8巻・残月『かのひとの面影膳』に「満中陰」という言葉が出てくる。これは主に西日本で使われていて、関東の四十九日とか七七日(どちらも、しじゅうくにち、と読む)にあたる言葉だが、「満中陰」という言い方は関東ではほとんど使われていない。(ちなみに、東京のデパートでは四九日後の香典返しの掛け紙には黒白の水引、表書きは「志」がほとんどで、黄色と銀の水引、「満中陰志」の表書きは頼まないとやってくれません)
でもこの『かのひとの面影膳』では店主・種市(おそらく江戸生まれ、江戸育ちであろう)が「満中陰」と口にしている違和感。
江戸時代にはお江戸でも「満中陰」と言っていたのだろうか? なんてつまらないことに引っかかってしまった。いや、いいんですけど。
それと、料理を題材にした物語だから、まあ、そうなるのも仕方ないかなとは思うのだけれど、競争相手との料理番付で物語を盛りあげたり(ライバルとの対立とかね)、あるいは、(心が)傷ついたときに元気になるよう考えた料理が、幼いときに食べたもので、それによって体調不良を解決させるとかとか。
思わず「美味しんぼ」か! と突っ込みを入れたくなる(笑)。
しょうがないとはわかっちゃいるんだけれどね。
まあ、そのほかにもポロポロと違和感を感じた部分はあったのだけれど、恋愛小説として読めばじゅうぶんおもしろい。