『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき著
久しぶりに宮部さんの杉村三郎シリーズ。初出2017年、2018年出版。
全3作
「絶対零度」
2011年、東日本大震災後まもない日本が舞台。
宮部さんがこの年を選んだのはそれなりの理由があったわけで、依頼人の夫が東京電力のグループ会社の社員(役職についている)なので、事件に関与する時間がない(知らせる気もない妻)という設定。で、最後まで依頼人の夫は出てこない。まあナンですな、夫がまともな人で、その頭でまともに考えれば私立探偵に依頼することはないだろうと思われるからね。
読みはじめてすぐに感じたのは、これってどこかで聞いたようなような話・・・ということ。この小説は初めて読んだのは間違いないのだが。
で、すぐに思い出した。「発言小町」で話題になったトピックスに似ている、ということだった。
中心となる事件、その周辺で起こる細かいエピソード、どれも「発言小町」で読んだような気がする。
もちろんそっくり同じではない。中心となる事件はあのトピックスがヒントかな? 細かいエピソードはいろんなトピックスでよく話題になっているなー、とかね。
すると、小町を読んでいて不愉快だったことを思い出してしまって、なんだか不愉快な気分になってきた。この小説でも不愉快な人が次々登場するしなー。
話としてはよくできていると思う。
たとえヒントがどこであろうとも(だいたい私がそう感じただけでホントに小町のトピックスがヒントになっているかどうかは不明だし)、それをおもしろい小説にできるかどうかは作者の力量だ。
そんなこんなでまあ読み終えたわけだけれど、不快感だけがボヤーーーんと残った。
で、「華燭」「昨日がなければ明日もない」も似たような感想。
話としては良くできているしおもしろいんだけれど、不快感が残る。
リアル、なんだろうな。
普通の日常を送っている普通の人に見える人々の裏に、あるいは底に隠された悪意。
それがいつ自分に襲いかかってくるかもしれないという恐怖。
で、この感覚どこかで・・・と思ったら、そうか宮部さんの『火車』、あるいは『名もなき毒』だ。
まったくこういう話を書かせると宮部さんは本当に怖い話に仕立てるんだなーとあらためて思ったのだった。