日和見日記

pig-pearl 一行紹介 2012年4月に武蔵野美術大学通信教育課程に入学、2018年3月卒業しました。日常生活のあれこれを記述しています。

『R・P・G』(集英社文庫 2001年8月)

本棚の整理をしていたら、宮部さんの初期の本がたくさん出てきた。時々同じ本が2冊あったりもして、読んだことを忘れてついうっかり買っちゃうんだよね、困ったモノだ。
さて、『R・P・G』、読み始めたらまったく読んでないことに気付いた。買ったまま読む気が起こらなかったのか、後で読もうと思っているうちに忘れ、そのうちに読んだ気になってしまったものなのか、いやはや・・・。10年以上も経ってからやっと読了した次第。


この本は宮部さん初の書き下ろし文庫、だそうな(帯にそう書いてあった)。解説は清水義範さん。
10年以上も放っておいたが、内容はおもしろかった。
登場人物には『クロスファイア』(上・下 光文社 1998年)の刑事・石津ちか子と『模倣犯』(上・下 小学館 2001年)の刑事・武上悦郎が。
そもそも『クロスファイア』は『鳩笛草』(光文社 1995年)のなかの中編『燔祭』の登場人物、青木淳子を主人公にして長編にしたものである。


このように他の作品の登場人物を中心に据えての作品というのが、宮部さんはけっこうあって、『模倣犯』には続編のような『楽園』http://d.hatena.ne.jp/pig-pearl/20171211 っていうのもあるし。
作者である宮部さんも、気に入った登場人物にはこういう事件を扱って欲しいとか、彼だったら(あるいは彼女だったら)このように動いてくれる、と話が作りやすいのかもしれない。
クロスファイア』と『鳩笛草』ももう一回読んでみようと思ってしまった。再読するには話が悲しすぎて少々辛いという気がしないでもないが。


内容はネタバレにならない程度に・・・、底辺に父子、母子、夫婦の関係性があり、なかなか身につまされるセリフも多かった。特に父親の一番嫌いな部分の性格をそのままそっくり受け継いでいるという主人公の女の子が痛々しく、ホント切ないわ。親の嫌いな部分がまんま自分の性格だと気付いた時のショック(この女の子は小説の中ではまだ気付いていないが)は大きいのよね・・・しみじみ。


他に『パーフェクト・ブルー』(東京創元社 1989年)『心とろかすような マサの事件簿』(東京創元社 1997年)の元警察犬「マサ」のシリーズを再読。こちらはまあまあ・・・かな。
ただ、久しぶりに読んで気付いたのは、『パーフェクト・ブルー』のなかで、マサの飼い主、蓮見浩一郎のうまれ故郷の方言「ささらほうさら」が出てきたこと。これは南信州甲州の方言らしく「いろいろなことがあるものだ」とか「酷いめにあいましたねえ」という意味らしい。その言葉をもじって『桜ほうさら』(PHP研究所 2013年)http://d.hatena.ne.jp/pig-pearl/20171213という作品も書いている。
宮部さん、よほどこの言葉が気に入っていて、いつかこの言葉で作品を書いてみようと思っていたのか? ま、そんなこんなを思いつつ読んでおりましたとさ。