『桜ほうさら』
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2013/02/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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宮部さんの時代小説は好きだし、ただここのところちょっとな…な気分だったから期待していなかった。
でも、おもしろかった。
この小説はお家騒動が柱になっている。
もちろんそれだけではなく、宮部さんらしく、長屋の住人の人情、お店ものの抜け目無さ、藩の重役と庶民、都会(江戸)と地方の格差、若い男女の恋などなど、人物描写も巧みでそれぞれおもしろい。
毎度のことながら、宮部さんは少年の描き方がうまいなと思う。
今回だったら富勘長屋の「太一」。主人公は22歳だからもう青年だけれど少年のような雰囲気だし。対して女性の描き方はちょっと手厳しいかも(全部じゃないけれど)。女性の女性を見る目は怖い。
そして、「救荒録」という、天災に遭った時に生き延びる方法を書いた書物をもっと流布させたい、と主人公に言わせているあたりに、近年震災始め様々な天災の被害から学んだことを書き残すべきではという、宮部さんの思いが伝わってくる。
先日読んだ「楽園」の登場人物(主人公ではなく)の住んでいるところが「船山市」、「桜ほうさら」のお家騒動の舞台は、上総国搗根藩(かずさのくに とうがねはん)と、千葉県出身の私にはなかなか笑えるネーミング。
船山市は船橋市をもじったものだろうし、搗根は東金をもじったものだろうと想像した。実際にそこをモデルにしているとかではなく、名前を借りただけにしても、あの辺りかな、と思いつつ読むのはそれなりに楽しい。(「桜ほうさら」は「ささらほうさら」という主人公の出身地の方言からだそうだが、ささらほうさらは山梨県の方言だったような。ということで架空の藩の出身と言うことにしなくてはならないわけだな・・・)