乃南アサを読む日々
昨日で非常事態宣言は解除された。
これまでただひたすら読書の日々は続いた。
だから、おいしいモノを食べに行きたい、温泉にも行きたい、買い物もしたい、コンサートにも行きたい。旅行は特にいきたいわけではないけれど、そういうのも久しぶりにいいかも…とかとか。
しかしまあ、これからも変わらない日々は続くのだろうな、とも思うのだった。
ここ一ヶ月くらいは久しぶりに乃南アサさんの本を集中的に読んでいた。
今野敏の『TOKAGE』シリーズを読んでいたら、久しぶりに乃南アサさんの『凍える牙』を再読したくなって、それから次から次へと読むことになった。
で、『凍える牙』に続編があったのは知っていたし、読んでいたのだが、さらにもっと出ていることを知った。
長編、短編と結構出ていたからせっせと読んだ。
以前、乃南さんの本を集中して読んだ時期があったのだけれど、それからしばらく読んでいなかったから、図書館でせっせと借りて読んでみた。
既読、未読、もう手当たり次第。
その中でおもしろかったシリーズを二つ。
『ボクの町』『駆けこみ交番』の「新米巡査・高木聖大クン」のシリーズ。
訳あり女性二人の下町生活を描いた「マエ持ち女二人組」シリーズ。
で、「高木聖大」クンは馬鹿馬鹿しくもおもしろく、今野敏の『精鋭』とはまったく違う新米警官。しょうもない警官なのに、妙に憎めないキャラクターだったりする。
そしてその「高木クン」が「マエ持ち女二人組」にも、チャラくていい加減に見えるのに憎めない警官として出演する(笑)。
どちらも連作短編なので読みやすいけれど、高木クンシリーズは単純に笑って読める作品、マエ持ち女シリーズはかなり重い。
ことにマエ持ち女シリーズは最後に2011年の3・11の描写がかなりリアルだ。
すごいなと思いつつ読んだら、乃南さんがあの日体験したことをそのまま小説に落とし込み、描いたようだ。つまり乃南さんが実際に仙台で罹災したことにより、小説の結末が変わってしまったのである。
いったいどのような結末を考えていらしたのかは不明だけれど、あの災害はこんなところにまで影響があったのだとしみじみとしてしまった。
あれから10年が経った。
1995年の阪神淡路大震災からは26年、1923年の関東大震災からは98年、まもなく100年になる。
それぞれの大震災のたびにたくさんの犠牲者が出、たくさんの人の人生が変わってしまったのだと、あらためて思わされる小説であった。