師走の実家
今月は毎週実家に行っていた。
今朝起きたときは寒かったが、洗濯物を干し始めたらなんだかポカポカと暖かい。
実家では台所を出た外に洗濯機が置いてあり、その前が物干しになっている。
これが寒い日だと洗濯機から洗濯物を出して干すだけでもいやになってくるが、今日は気持ちがよかった。
全部を干し終わって、台所に戻り、戸を開けたままたばこを吸って外の景色を眺めていた。
鳥の声も聞こえず、車の音もしない。飛行機も飛んでいないから、とにかく静か。
とても師走とは思えない静けさだ。
昔、私が小さかった頃は、暮れは独特の雰囲気があった。
畳を上げて庭に運び出し、煤払い用の笹を束ねてワサワサと煤払いをした。古い障子紙を剥がして新しい障子紙を貼る。しめ縄飾り、餅つき、そしてお正月のお客様用のごちそうを作る。椎茸やこんにゃく、昆布、魚の煮物をそれぞれ作り、他にも刺身、酢蛸、膾やらなんやら、とにかくおおわらわでそれらの準備もしていた。
正月にはおじさんおばさん、従兄弟たちが泊まりに来るし、親戚一同が新年の挨拶で会する日があったからだ。
母は暮れから正月三が日、自分の実家に行ったことはほとんどなかった。
とにかくそんなわけで、暮れは忙しかった。
でも、子供の頃は、それは楽しい正月前の行事だから、忙しくてもウキウキと手伝っていたような気がする。
そして、そんな無邪気な時期が過ぎれば、暮れの忙しさがわずらわしくなるだけだったわけで・・・。
一年の締めくくりとして大掃除をし、気分一新で新しい年を迎えるということを考えれば、慌ただしくともそれが「師走」というものだし、季節感からいっても、師走の雰囲気を味わうのは大切なことなのだろう。
それでも、と私は思う。
こういう静かな師走に、私は長いこと憧れていたんだと、しみじみ思ったりしたのだった。