《迷宮》清水義範著 を読む
1999年に発表された作品。
清水義範は好きなんだけれど、この作品のことは知らずにいた。
たまたま昨日図書館で見つけて、一気呵成に読んだ。
さすがの文章力。
内容は・・・と、そうだな、文庫本の裏表紙に書かれている紹介文を引用させて貰うことにします。
24歳のOLが、アパートで殺された。猟奇的な犯行に世間は震えあがる。この殺人をめぐる犯罪記録、週刊誌報道、手記、供述調書……ひとりの記憶喪失の男が「治療」としてこれらのさまざまな文章を読まされて行く。
果たして彼は記憶を取り戻せるのだろうか。そして事件の真相は? 視点の違う“言葉の迷路”によって、謎は深まり闇が濃くなりーー名人級の技巧を駆使して大命題に挑む、スリリングな異色ミステリー
とまあ、こんな作品です。
で、感想を書くとネタバレになってしまうのですが。。。
つまりあれだね、《迷宮》というタイトルから物語は既にはじまっていたのだと。
そしてさいごの2行、「私は、言葉を失ってしばらく沈黙してしまった。しかし、十秒ほどたって、とうとうたまらず声をたてて、くっく、と笑ってしまった。」
これがですね、迷宮への入口であり出口である、と、まあこう思えば間違いないのでしょう。
私はミステリーとかサスペンス小説は結構好きで、それなりには読んでいる。(ただ、好き嫌いが激しいからかなり偏っている読み方ではありますが)
で、どんでん返し、予定調和、犯人を追い詰めていく心理サスペンス等々・・・どれもおもしろければ好きなのだけれど、最近はどんな本を読んでもなんだか先(結末)が見えちゃってつまらなかった。それをこの《迷宮》は見事に裏切ってくれた。
なにがなにやらの《迷宮》に連れて行ってくれるわけで、そういう意味で清水義範の力量に感心したのだった。
似たような作品を東野圭吾も書いていたような気がするが、読後の感想はまったく違う。少なくても東野圭吾の作品に感心はしなかった。(それなりにおもしろかったし、頑張ったんだなーとは思ったけれど)
ただ、この作品、ホントに《迷宮》なので、感想がかなり分かれるのも頷けるところ。