『楽園』 上・下
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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「模倣犯」は初出が1995〜1999で週刊ポストに連載されていた。その頃、歯医者さんだったかどこかで週刊ポストを読んだ気がする。でも長い連載だったので、2001年に単行本が出版されてから全部を読んだ。
たぶん、この頃から宮部さんの作品を読むのが辛くなってきた気がする。
その後も読んではいるけれど、出版されるのを楽しみにして買うということがなくなったような・・・。
この「楽園」は2005〜2006年、産経新聞で連載されていたそうだ。知らなかった。
すっかり宮部さんから遠のいてしまっていたのだと思った。
予備知識無しに読み始めて、すぐに「模倣犯」の続編? と気付いた。
それくらい「模倣犯」は私にとっても忘れられない作品だったのだと思った。
ただただ陰惨な事件の小説ということだけで、細かいことはすっかり忘れているのに、最後のシーンだけは覚えているという・・・。
で、「楽園」はおもしろかった。
こちらも読んでいくのが辛い事件の小説ではあったけれど、模倣犯よりも短いし(それでも充分長編だが)、殺された人数も少ない。
いつも思うけれど宮部さんはキャラクター作りがホントに上手だと思う。登場人物の一人一人に感情移入してしまいそうになるし、嫌なキャラには腹も立つ。
そして宮部さんの得意(?)な超能力。好きなのかな? 私も嫌いじゃないけれど、超能力の話が出てくると、あ、宮部さんだと思ってしまう。
「模倣犯」も「楽園」も殺人事件を扱っている。すると犯人捜しがメインになるわけだけれど、(「模倣犯」は忘れたが)「楽園」はその動機の謎解きがメインになっている。すると亡くなった人がどういう人間だったかということが延々と綴られていくことになる。これが私にはなかなか辛い部分であった。
殺人事件だったら、何故被害者は殺されなくてはならなかったのか、重要な部分だから当たり前なんだけれど、いわゆる密室トリック、アリバイトリックなどは一切出てこないで、ひたすら、死んだ人間と生きている人間の心情を綴っている。たった一言の言葉、一つのモノから、細い糸をたぐり寄せるようにして、一歩一歩真相に近づいて行く。そこが宮部さんの小説の面白いところでもあり、読んでいて辛くなる部分なんだなと今回実感した。つまり、リアルなんだろう。
それが悪いとは思っていない。立派な作品だと思う。ただ今の私にはちょっと辛い作品だったのだなと思ったということ。