松井今朝子を読む
四文屋―並木拍子郎種取帳 (ハルキ文庫 ま 9-5 時代小説文庫)
- 作者: 松井今朝子
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2012/06/15
- メディア: 文庫
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松井今朝子の名前を知ったのは、直木賞を受賞したとき。(第137回《吉原手引草》で受賞)
直木賞を受賞したからと言って必ずしもおもしろいわけではない・・・少なくても私はおもしろくないと思った作品もあったわけで。
何故コレが受賞? と不満に思ったりしたこともけっこうあったので、それ以来受賞作だからといって期待しないようになった。
で、松井さん、気になってはいたけれど読まずじまいだった。
今回まとめて読んだらたいそう面白かった。
うーん、もっと早く読めば良かった。
内容も文章力も問題なし、というか、抜群の文章力。
すいすいすいすい読める。
読んでいて気持ち良い文章。
さて、並木拍子郎シリーズはどれもおもしろかったのだけれど、《三世相》の最後の話「旅芝居」を読んで、つくづくたいしたもんだ、と思った。
この話では千葉県の佐原や銚子が舞台となっており、その土地の方言や訛りが出てくる。
私は、千葉県と東京以外の方言や訛りはよく知らないので、小説で知らない方言や訛りが書いてあればそうなんだと思うしかないけれど、佐原近辺で生まれ育ったからそこの方言、訛りはよくわかる。
で、その方言や訛りが、かなりリアル。もちろん、リアルだけれど、まったくそのまんまでもない。小説だもの(笑)。
松井さんは京都の生まれで、早稲田大学卒業。
銚子地方にお友達やご親戚がもしかしたらいたかもしれないけれど、もしどなたも知己がいないとすれば、取材して書かれたのだろうと思う。それでここまでリアルに書けるんだ、と驚いた。
もっとも銚子や佐原地方の舞台にした小説ってあまりないからこんなふうに方言や訛りをリアルに書かれたものを読んだことが無くても、不思議はないんだろうけれど、さほど綺麗でもない方言や訛りをリアルに書いてくれたことは、ちょっと嬉しかった。