日和見日記

pig-pearl 一行紹介 2012年4月に武蔵野美術大学通信教育課程に入学、2018年3月卒業しました。日常生活のあれこれを記述しています。

東京新大橋雨中図 杉本章子著(文春文庫) ISBN:4167497026

うちにあるのは知っていたけれど読んだことがなかった。実家での暇つぶしにと思い本棚から抜いていった。杉本さんの作品は読んだことがなかったから夫が買ったのかと思っていたら、違うという。私も買った覚えがない。じゃあなぜあったんだ? 考えられるのは杉本苑子さんとまちがえたか、第100回(平成元年)直木賞受賞と書いてあったからか。
まあ、そんなわけで、あまり期待していなかったのだけれど、これがすごくおもしろかった。おまけに、やけにじょうずな解説と思ったら、田辺聖子さん。おもしろいはずだわね。
幕末から明治初期に生きた、最後の木版浮世絵師、小林清親の波瀾にみちた半生。時代背景が丁寧に描かれ、暗くなりがちな題材を決して暗く重たい話にせず、人情味溢れる話なのに、妙な人情話にならず、読み終わったあとに爽やかな気分になれる、珍しいタイプの時代小説。大満足でした。
カバーは宇野亜喜良さん。作品にあった美しい画です。